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【同時進行の向山型国語6年(教育出版)】

「美月の夢」

TOSSシグナス札幌向山型国語研究会  田上大輔
作成日:2007年5月10日
更新日:2007年5月24日

  
 ○授業記録
   第1時へ 音読練習(1)
   第2時へ 音読練習(2)&設定の確認
   第3時へ 中心人物の検討&事件ごとに短くまとめる
   第4時へ 事件ごとに短くまとめる
   第5時へ 美月が自分の夢に気付いたのはどこか?
   第6時へ 美月が夢に気付くきっかけとなったところはどこか?
   第7時へ どっしりとしたかしの木は沼田さんか美月か?
   第8時へ 対比
   第9時へ 主題
   


【授業記録】  

 第1時 音読練習(1) ~ 5月7日(月) 

 見開き2ページ程度を追い読みし,その後起立させ1人読みさせる。
 そのくり返し。

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 第2時 音読練習(2)&設定の確認 ~ 5月8日(火)

 音読練習の後,物語の設定を確認した。
 まずは「時」である。

発問 大まかに言うと,昔話ですか,現代の話ですか。

と聞く。
 当然ながら,現代の話だ。

発問 具体的に言うと,何月の話ですか。

と問う。
 教科書に書いてある。
 「4月の終わり」だ。
 
 続いて「所」である。

発問  このお話では,次,次,次と場所が移り変わっています。3つの場所を書きなさい。

 「学校→家→マンションの屋上」だ。
 (ここでもう一つ聞く予定だったが忘れてしまった…)
 
 最後に「人」である。
 登場人物だ。

発問  登場人物は誰ですか。全てノートに書きなさい。

 「沼田さん」と「園長さん」を入れる子と入れない子に分かれた。
 討論させても面白かったのだが,時間の都合上,この物語になくてはならない存在であるから,登場人物に入れることにした。
 よって,登場人物は,「美月」「ヒロ」「翔太」「先生」「沼田さん」「園長さん」となった。

発問  中心人物は誰ですか。

 満場一致で「美月」となる。
 まあ,その通りなのだが,どうして美月が中心人物なのか,理由を書かせた。
 ここで時間切れ。

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 第3時 中心人物の検討&事件ごとに短くまとめる(1) 5月9日(水)

 漢字スキル2番のテストから。
 平均点97.7点。女子は2回連続全員100点。
 
 暗唱(「枕草子」)をして,「美月の夢」に。
 起立させ,隣同士一文交代で読ませた。
 
 前回,中心人物が美月だという理由を書かせて終了したので,それを発表させる。
 
「登場回数が一番多い。」
「どの場面にも登場している。」
「題名に美月という名前が入っている。」

という意見の中,
「視点が美月からのものになっている。」
「沼田さんや園長先生を登場させた。(事件との関わり)」

という意見を述べた子がいた。
 5年生の「大造じいさんとがん」で中心人物を検討させたときことを覚えたいたのだろう。
 
 ついでに昨日聞き忘れた発問も入れる。

発問  美月の住んでいるまちは田舎ですか,都会ですか。

 ほとんどが都会だという。(田舎という子が2名いたが,すぐに取り下げた。)
 根拠を探させると,「ビル」「マンション」「排気ガス」ということがあがる。
 (「富士山が見えるのは都会だ。」という子も。北海道人が富士山に持つイメージか?)
 
 そして,

発問 このお話を大きく5つに分けます。
    最初の事件と次の事件の区切れ目はどこですか。そのページを開きなさい。

と問う。
 5つではなく,もう少し多く分けられるのだが,今回は5つに分けることにした。
 区切れ目が1行空けになっているからだ。
 
 途中,全体の区切れ目に関係なく,沼田さんや美月からの手紙の部分が1行空けになっているので,念のため確認していった。
 
 以下,同様に5つの事件に分けていく。
 そして,事件1から

発問 どんな事件か,1行程度で書きなさい。

とまとめさせていった。
 ノート書かせて,それを板書させる。 
 見ながら,キーワードの確認。
 事件1なら,「美月」「将来の夢」「作文」だろう。
 まとめると
「将来の夢の作文が書けなかった美月。」
というようになる。(要約ではなく,ラフな感じでやらせた)
 
 事件2は,書けたら持ってこさせ,その場で○か×をつけた。
 見る観点はキーワード(「美月」「沼田さん」「亡くなった」)が入っているかどうかである。
 まとめると,
「沼田さんが亡くなったことを知った美月。」
というようになる。
 
 事件3を書かせたところで時間切れ。
 今日もまた,1つ発問をし忘れる…。

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 第4時 「事件ごとに短くまとめる」 5月11日(金)

 事件ごとに短くまとめる続き。
 前回,事件3を書かせたところで終わったので,その確認から。
 
 キーワードは「美月」「沼田さん」「はがき」
 「沼田さんとずっとはがきのやりとりをしていた美月。」
というようになる。
 
 事件4を音読させ,まとめさせる。
 私は
「沼田さんからの最後の葉書を読んだ美月。」
と考えていたが,子ども達は違った。
 この事件の最後のところを中心に考え,「それだけでいい。」ということを入れていた子が多かった。
 それを取り入れると
「沼田さんと心をこめてはがきをやりとりしたことが大切なのだとわかった美月。」
というようになるだろうか。
 
 最後に事件5。
 音読させ,まとめさせる。
 キーワードは「美月」「沼田さん」「夢」である。
 「沼田さんの願いのおかげで自分の夢に気付いた美月。」
というようになる。
 
 本当はそれぞれの事件についてまとめさせたあと,いくつか発問しようと思っていたのだが忘れていた。
 オマケで,それを聞いていく。
 事件1は,その最後の文について。

発問 「書けなかった」と「書かなかった」はどう違いますか。

 ノートに考えを書かせる。
 「書けなかった」は書く内容がないこと。
 「書かなかった」は本当は書けるのにあえて(わざと)やること。
となるだろうか。
 
事件2は,

発問  なぜ,どきどきしながらふうを切ったのですか。

だ。
 隣同士説明しあわせた。
 沼田さんが亡くなったのではないかと予想したからと考えられる。

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 第5時 美月が自分の夢に気付いたのはどこか? 5月14日(月)

 教科書の音読から。
 一文ごと「1人読み」「一斉読み」「1人読み」「一斉読み」・・・というように読ませていく。 

発問 お話の最初と最後で美月はどう変わりましたか。

 最初は「夢がない」で,最後は「夢がある」である。
 ノートの右端に「夢がない」,左端に「夢がある」と書かせ,それを矢印で結ばせた。

発問 美月が自分の夢に気付いたのはどこですか?
    その一文を書き抜きなさい。

 書いた子からノートを持ってこさせ,板書させる。
 次の4つの意見が出た。(実際の黒板風に示す。もちろん,実際は縦書きだ。矢印も一直線)

 夢がない
   ↓
   ↓
   ↓ A.はがきは沼田さんがなくなったという知らせだった
   ↓
   ↓
   ↓
   ↓
   ↓
   ↓
   ↓ B.―そうか。
   ↓
   ↓ C.いろんな所へ行くことだって,すてきな夢だ。
   ↓
   ↓ D.いろんなものを見ていろんな人に出会いたい。
   ↓
 夢がある

 それぞれに,どうしてそこだと思ったのか理由を発表させる。(発表しやすいようにA~Dとそれぞれに記号をつけた)

発問 この中で「これは違う」と思うもの1つ選んで,班で相談しなさい。

 班ごとに相談させる。
 そして,個人で発表。(この発表は,班での話し合い結果に拘束されない)
 AとDが消される。
 残るは,BとCだ。
 どちらかを考えさせたところで時間切れ。

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 第6時 美月が夢に気付くきっかけとなったところはどこか? 5月15日(火)

 美月が自分の夢に気付いたのはどこか? 
 次の2つが残っていた。
 
  B.―そうか。
  C.いろんな所へ行くことだって,すてきな夢だ。
 
 1日経ったら,2名を除き,ほとんどの子がBになっていた。
 それぞれ発表させる。
 「そうか。」は気づいたときに使う言葉だからBとなる。
 
 次に,

発問 美月が自分の夢に気付いたのは「そうか。」のところですが,
    その前に,気付くきっかけになった重要な文があります。
    それはどこですか

と問い,その部分に指を置かせ,教科書を持ってこさせた。
 
  「富士山のような人」
  美月は,口に出して言ってみた。
 
の部分である。
 なぜか?
 この部分はこの物語中で初めて美月が発した言葉だからだ。
 
 次に,「中心題材」を扱った。
 いくつもの事件に共通して出てくるキーワードである。
 例として「大造じいさんとがん」を取り上げ,「人間とがんの間で繰り広げられた戦い」と示した。
 この物語では,

「沼田さんと美月とのはがきのやりとり。」

というようになった。
 時間がなかったのであっさり終わったが,
 「はがきだけをやりとりしていたのですか。」
 「はがきを別な言葉に置き換えなさい。」

というような問いもできただろう。
 「はがきを通した心のやり取り」ということに気付かせるのも大切なことである。

 最後に,象徴の話をし,

発問  「どっしりとしたかしの木」とは何を象徴しているのですか。

と聞いた。
 「沼田さん」という子と「美月」という子に分かれる。
 意見を書かせたところで時間切れ。
 次の時間までに考えておくように言って終了。

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 第7時 どっしりとしたかしの木は沼田さんか美月か? 5月18日(金)

 前回の続きから。
 「どっしりとしたかしの木」は沼田さんを表すのか,美月を表すのか。
 
 指名なし発表をさせ,討論。
 「緑の葉は何を表しているのか」「沼田さんは大きな木なのか富士山なのか」「ぐんと近くに見てたのはなぜか」について。
 
 発言した子にノートにAと書かせ,発言していない子を立たせ何か意見を言えたら座らせた。
 
 最後に6~7分でミニ評論文を書かせて終了。

 かしの木は美月を表している。
 なぜか。その理由は三つある。
 一つ目は,美月は最初夢がなかった。でも沼田さんのおかげで美月は夢が見つかった。だから「前に見たときよりもぐんと近くに見えた。」とは,前は夢が遠かったが今は夢は近くにあるということだ。
 二つ目は,「どっしりとしたかしの木」は美月が成長したということ。「どっしり」は「大きい」という意味だから。
 三つ目は,「新しい緑の葉」は,ふつう沼田さん(亡くなった人)にはたとえないから。「新しい緑の葉」は,美月が夢が見つかって「私は新しくなったんだ~」ということ。
 だから,かしの木は美月を表している。

 かしの木は沼田さんを表している。
 なぜか。
 理由は,一つ目は「沼田さん自身の夢だったのかもしれない。」ってかもしれないから,かしの木は沼田さんはかしの木であるかのうせいはあるからです。
 二つ目は,沼田さんに夢を教えてもらったようなもんだから,沼田さんは大きいかしの木になった。
 もしかしの木が美月だったら,自分が自分を見ていることになるからやっぱり沼田さんだ。
 だからかしの木は沼田さんだ。

 かしの木は,美月や美月の夢を表している。
 なぜか。
 まず,主人公は美月だ。だから美月目線で色々なことが書かれているはずだ。そう考えると,かんたんだ。美月は沼田さんと会ったことがない。沼田さんがどういう人か知らない。それが,美月は富士山が見えなくて,「でも,あの向こうには富士山がある。」と書かれている。だから,富士山は沼田さんになる。そうすると,どっしりとしたかしの木は,美月になる。
 次に,手紙に書いたのはそれぞれの夢,ということだ
 これらのことから,かしの木は美月を表しているとわかる。

 かしの木は美月を表している。
 なぜか。
 沼田さんがかしの木だという人が言っていた意見には,天国からや木になって美月を見守っているといっていた人がいた。だけど,これは無理な話だ。だって沼田さんも美月もはがきで知りあっただけで,どちらも顔を知らないから,沼田さんが美月を見守っているというのはむりなのだ。
 だからかしの木は美月なのである。

 かしの木は美月のことだと思う。
 もう,かしの木がでてくる時には,沼田さんは富士山のような人になりたかったと思うってことをもうわかっていたと思う。少しでもその気持ちがあれば,人は信じ込んでしまうから,美月は,沼田さんを富士山とかいしゃくしたと思う。
 そして,富士山を沼田さんにするということは,自分のその中に,登場させると思う。
 ビルとマンションは間の人。
 排気ガスは,沼田さんに会えなかったモヤモヤした心だと。
 そしたら,のこりはかしの木。
 あと,屋上にいる美月に,沼田さんが近いというのはおかしいと思う。近くにあるものは,自分にたとえると思う。
 だから,かしの木が美月。

 かしの木は沼田さんを表している。
 美月がかしの木だとしたら,どうして自分のことを沼田さんあてに書くのか。
 沼田さんがかしの木だから,『木のような人』と書いたのだ。
 富士山が沼田さんの夢だとしても,はがきには,美月が富士山になると書いてあるから,沼田さんは夢をあきらめたのだと思われる。
 顔を知らなくたって,はがきを心をこめて書いたんだから別にいい。
 かしの木が,「ああ,もうすぐ夢見つけるんじゃない?」的な感じで,見守っている。
 だから,かしの木は沼田さんを表している。


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 第8時 対比 5月21日(月)

 隣のクラスとの進度調整のため,もうちょっと続けた。
 まず,音読テストを行う。
 その後,対比。

発問  美月と沼田さんはどんな点で対比されていますか。

 ノートに書かせて板書させる。

   【美月】     【沼田さん】
  夢をもらう    夢をあげる
  マンション    養老院
  大きな木    富士山
  小学生      老人
  生きている   亡くなった
  文を変える   文を変えない


などが出る。
 その後,5年生のときにやった「ベン図」を書き,円が重なる部分を示して,

発問  美月と沼田さんの共通点をできるだけたくさん書きなさい。

と指示。(ベン図の中ではなく,ノートに書かせたが)

 心をこめて手紙を書いた
 会いたいとは書かなかった


などが出る。 

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 第9時 主題 5月22日(火)
 
発問  「美月の夢」というお話の主題は何ですか。
    これまでのお勉強,事件ごとの要約,中心題材,対比などをもとに書きなさい。

と書かせる。
 難しい。
 それでも,

  夢がないけど,きっかけが見つかれば夢が見つかる。
  夢があるということは良いことだ。 
  みんなに夢を持ってほしい。
  夢は人から学ぶもの。
  全ての人がちゃんとした夢を持っている。
  人には必ず夢がある。
  夢を持って生きる。
  夢はいずれみんな見つかる。
  夢は人生にかかかっている。
  夢は大事。
  夢がないと思っていてもそれは気付いていないだけで誰にでも夢がある。
  まわりの力で答えは見つかる。


などが出た。
 
発問  この中で1つだけ種類の違う意見があります。どれですか?
 
と尋ねると,最後のものだと言う。
 これだけは「人との関わり」がテーマで,他は夢がテーマだ。
 
 そこで,

指示  今,夢について書いた人は,人とのかかわりをテーマに主題をもう一つ考えなさい。
    人との関わりについて書いた人は,夢をテーマにもう一つ考えなさい。

と指示した。
 
 最後に,「国語とは関係ないですが」と言って,夢について,メンターについて話して授業を終えた。

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