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いじめはいけないと痛感させる道徳「わたしのいもうと」

TOSSシグナス  田上 大輔
作成日:2002年12月4日
師尾喜代子氏論文の修正追試
*元実践:『TOSS道徳「心の教育」5 心に響く「力のある資料」で生き方を教える道徳教育』(明治図書)P62

 

 いじめに対する「怒り」「憤り」「悲しみ」。力のある資料が,子ども一人一人の心に深く突き刺さります。

 

 教材文の前半部分を配布(妹がいじめを受け学校へ行けなくなり,やせ衰え命をようやくとりとめたが,中学生になっても部屋に閉じこもっている場面までのプリント)。

指示1  一人ひとり黙読しなさい。

 シーンとなる教室。この資料に力がある証拠である。
 子ども達が黙読を終えた頃を見計らい,担任が朗読する。

指示2  「わたしのいもうと」を読んでわかったこと,気付いたこと,思ったこと,考えたことを書きなさい。3つ書けたら先生の所へ持ってらっしゃい。

 時間を5分ほどとる。
 続々と子ども達がやってくる。

  1. いじめられるとご飯も食べられなくなるのかな?
  2. もしも私に妹がいていじめを受けているんだったらとてもかなしいです。
  3. いじめを受けて自殺する人もいるから絶対にいじめはいけないと思った。
  4. 自分もそんないじめにあったら学校に行きたくなくなる。
  5. いじめをする人は人の気持ちを考えていない。
  6. 妹のあざはきっとけられたりたたかれたりしたものだと思った。
  7. いやな気持ちになった。
  8. 心細そう。
  9. あざができるまでいじめるなんて恐ろしい。
  10. お母さんは必死。
  11. 命をとりとめてよかった。

 等のべ160の意見が出た。5分でこんなに書けたのは初めてのことだった。
 (子ども達の書いた,全ての意見はこちらから)

 

指示3  書いたことを「指名なし発表」しなさい。

 普段,指名しないと発表しない子が多いのだが,この日ばかりは違った。なんと全員が発表したのだ。

 

発問1  実はこのお話には続きがあります。どうなると思いますか。自分の予想を書きなさい。  

 一つ書いたら教師の所へ持って越させ,板書させる。

  1. いじめた人があやまって仲直りをする。
  2. 友達になった。
  3. みんなに勇気づけられて,学校に行くようになる。
  4. 妹はもとにもどると思う。
  5. いじめがなくなっていると思う。   など,「明るい」方向の意見が17人。
  1. 部屋にひきこもったまま。
  2. 今もまだふり向いてくれないと思う。
  3. やった人がいじめをされる。
  4. いじめがひどくなる。
  5. 妹は自殺するか死んでしまう。   など,「暗い」方向の意見が12人。

 明るい方向の意見の方が若干多かったのは,こうあってほしいという子ども達の願いのあらわれなのだろう。以前,いじめの授業をしたので,そのことを覚えていたのか,暗い方向へ考えた子も予想していたよりはいた。

 自分の書いた意見を発表した後,資料の後半部分(「そしてまた年月がたち,いもうとを〜」の所から)を配布した。

 子ども達は,配布されるのを待ち構えるかのようにシーンと読み始めた…。
 しばしの沈黙。予想しなかった結末に言葉が出ないのだろうか。教室全体が悲しみに包まれた。

 

指示4  お話の続きを読んだ感想を書きなさい。

 時間の都合上,2分程度の短い時間で書いてもらった。

 お話の続きを読んだ感想を書けた子から,その場に起立し発表させた。中には一度発表した後,更に書き足して発表した子も数名いた。

  1. 妹は立ち直れないままひっそりと死んでしまったのでおどろいた。
  2. いじめをされた人は死んだからいじめをした人は人殺しになると思う。
  3. かなしい気持ちになった。お母さんがくろうしたのにだめだった。
  4. もしも死んでなかったら,もしもいじめられていなかったら幸せだったかもしれない。
  5. いじめた子は高校生になってうれしいと思うけど,その女の子のお母さんはすごくくやしいと思う。
  6. いじめていた人達は,自分のことが悪いと思っているのか。
  7. 「妹はひっそりと死にました。」と書いてあったからびっくりした。
  8. いじめをした人にいじめをされた人の苦しみを味わってほしい。
  9. 人をいじめておいてなぜ笑っていられるのか。
  10. いじめが人を死ぬまでおいつめるとは思わなかった。
  11. 妹はきっと学校に行きたかったと思う。
  12. 妹をいじめた子達がゆるせなくなった。
  13. 妹も笑顔で学校に行きたかったのにひどいと思った。

  など短い時間の中でたくさん書いてくれた。

 

語り1
 以前勉強したように,いじめはヘビの脳を攻撃します。ヘビの脳は息をしたり,ご飯を食べたいと思ったり,眠りたいと思ったり,トイレに行きたいといったような,生きていく上で最低限必要な役割をしています。いじめは人の生きる力を奪う殺人なのです。絶対に許されません。  

 

指示4  今日の勉強の感想を書きなさい。その中に,「これから自分はこうしていく」ということを必ず書くんですよ。

 書けた子から私のところに持ってこさせた。目を通した後,前に立って発表させた。さながら決意表明の様相だった。
 ほとんどの子が「絶対にいじめはしない」と書いている中,Aさんは次のように書いていた。

 「私は,これからもいじめられている人やこまっている人達の役にたちたいと思いました。」

 とっても大事なことなので,予定になかったのだが,少し話をすることにした。

語り2
 Aさんがいいことを言ってくれました。このクラスのみなさんはいじめは絶対にしないと言ってくれました。このクラスにいじめをするような人はいないと先生は信じています。ただ,これから中学,高校と進んでいく中で,いじめをしている場面に出会うかもしれません。そんな時,見て見ぬふりをするのではなく,Aさんが言ってくれたように,いじめられている人の力になってあげてほしいのです。助けてあげてほしいのです。味方になってほしいのです。どうか行動して下さい。みなさんならできます。お願いします。 

 (子どもの書いてくれた「今日の授業の感想」はこちらから。)

 これまでこんなに子ども達が自分の意見を書いたり,進んで発表したりしたことはなかった。「子どもの心を揺り動かすような力のある資料」のすごさを目の当たりにした。
 今後いじめの場面に子ども達が出くわした時,この授業を思い出して,子ども達が自ら言った「いじめはいけない」「自分はぜったいにいじめをしない」「いじめられている人を助ける」ということを実行していってもらいたいと思う。

*1 「後半部分」を読んだ後に,元実践にはない「語り1」を追加した。以前脳の話を学習していたので,そのことと今回の学習が上手く結ばれたようだった。

*2 元実践では「指示4」の部分は「今日学習したことを1行詩に書きましょう」となっていたが,自分のクラスでは詩を書かせた経験がほとんどないので、上記のようにした。みんなたくさん感想を書けていたので,結果的に変更してよかったと思う。

教材文:『わたしのいもうと』(松谷みよ子/文 味戸ケイコ/絵 偕成社)1200円
*なお,全文のみでしたら追試した前掲書でも入手できます。

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